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本には基本的な、それこそ慣れて来れば自然とできる様になるような簡単な事ばかりが書いてあったが、ランスロットは真面目に読んでいた。
本は所々曲がっていたり、表紙の端が擦れていた。彼女が何度も何度も繰り返し読んでいるからだろう。それほど重要な事柄でもあるのだ。
狩り場の歩き方、採取のコツ、肉の焼き方、果ては回復薬や爆薬の調合法までもが書いてある。
「やあ。君が新しく来たハンターさんかな?」
熱心に読みふけっているところに声が掛けられる。
その声はガウェインの物とは違い、少し高い。
本から目を放し、頭を上げる。
そこにいたのは少年だった。
袖と裾が短い、水色の服を着ている。その少年が家に踏み入って来る。
「ああ、そうだけど……キミは?」
ランスロットは椅子に座ったまま少年に話しかける。
「僕はマーリン。一応この村の村長です」
少年はそう言い踵を返して、
「それでは、ハンターさん。また」
そう言い残して去って行った。
「……あんな子が村長ねぇ」
ランスロットはそう呟き、視点を本に戻した。
これから長い間付き合う事になるであろう人物ではあったが、今は何よりもこの本の内容こそが大事だった。
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