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本に視線を戻して少しした所で、先程と同じ様に影が掛かった。
顔を上げると、ガウェインが何かの入った、一抱え程もある袋を持っていた。
「よ。大体は読んだか?」
袋を足元に降ろしながら言った。
床に接した瞬間、ガチャガチャという金属が擦れ合う音がする。
「粗方、どころか殆ど進んでませんね」
そう答えながら開いているページを見せる。
「ふんふん。まあ、そのあたりまで進んでりゃあ大丈夫だろ」
そう言うが早いか、降ろした袋を開いた。
中を覗き込むと、何かの皮と金属板が組まれた物が見えた。
「なにが大丈夫なんですか?」
「今から狩り場に行く」
「はい?」
「聞くのは大事だが、あんまし聞き過ぎるのもよくない。少しは自分で考えな」
言われて、少しだけ考えた後、
「……何故に狩り場に?唐突過ぎる」
そう答えた。
「ま、すぐに判る訳も無しか。要するに実地演習だ」
言い終わると同時に、袋の中身が見えた。
焦げ茶色の皮が全体を粗く覆い、胸部や脛、関節には銀色の鉄板が加えられた、
「……鎧?」
だった。
胴体部分だけではなく、兜に手甲、腰に巻く物、脚甲。全身を覆い尽くすには十分な物が揃っていた。
ガウェインは素早く人差し指をランスロットに向け、
「ご明察!」
そう言った。
「こいつはハンターシリーズっていう、大抵のハンターはまずこれを揃える所から始める。いわば第一目標だね」
ガウェインはそう言って胴の部分を掴み、ランスロットを立たせた。
「何を……」
するのか、と聞く前にガウェインが口を開いた。
「これはあんたの鎧だ。あたしから、ハンターになるあんたへの前祝い。受け取ってくれ。
あと、着方が判らないだろ?あたしが着させてやるから黙って着る」
ガウェインはそう言いながら既に胴に腕を回していた。
ランスロットはなにか言おうとしたが、止めた。
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