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俺は周りの様子を見渡す。
そして、ある異変に気付いた。
「…なぁ、久藤」
「どうした?」
尋ねる久藤に、俺は異変の内容を口にした。
「…他の奴らはどこ行った?」
「…何だと?」
疑問符を浮かべた久藤は、俺と同じ様に周りを見渡す。
その言葉通り、今、俺達が見た限りでは、目の前の少女以外、通行人も、コンビニの店員も、道を走る車も何も無かった。
深夜の街よりも静かな状況で、これ程静寂という言葉が似合う場面も無いだろう。
…そして、異変はそれだけでは済まなかった。
簡潔に言うなら…俺達がいた場所が、全て灰色と化していた。
本当に灰色だった。漆黒の空も建物の蒼白なライトも全てが、モノクロと化していた。
変わっていないのは、俺達と、目の前の少女くらいだった。
「一体、何が起こったんだ…。おい!あんたは何か知っているのかよ!?」
俺と同じく異変に気付いた久藤が、彼女の両肩を掴み、必死の形相で問い詰める。
次の瞬間―現段階で最大の異変が、俺達を襲った。
「ちょっと、痛いってば久藤!離してよ!!」
…思わず耳を疑った。
…ん?何かこの説明、前にも言った様な…まぁ、いい。
さっきまで俺達の質問に、全く応えなかった彼女が、急に話し出したかと思ったら、名指しで拒否ったんだぞ?
「…………」
久藤も、俺と同じ様にポカンとしている。
…だがそのおかげで、俺の脳内をグルグル回っていた疑問に、終止符を打つ事が出来た。
「…やっぱり絵理なんだな?」
「…正確には、多分違うかな?何度も話しかけてたのに、ずーっと無言なんだもん!!」
そう言った彼女は、モーションも増えたのか、腕を組んで少し怒った表情になる。
…引っかかってた物は取れたんだが、あれだな。第一印象と、性格が180度違うと、人は何も出来ずに呆然とするようだ。
…身を持って実感したよ。
「…とりあえず、この状況は、一体何なんだ。絵里はなんで、そんな服装…というか、人が変わっている?」
俺が質問すると、絵里はハッとした表情になった。
「そうだ!絵里が大変なのよ!!とりあえず、私が案内するから付いてきて!!」
…あれ、無視ですか?
「いいから!正直、私にも事情がよく分からないの!!とにかく絵里を助けて!!」
彼女は、悲痛な面持ちで後ろを振り返り、叫んだ。
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