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…走り出してから、数分経った頃だろうか?
なにぶん、走っていたので、携帯を見ている暇が無かった。
まぁ、とにかく。多少スピードは落としてくれたものの、それでも速いエリを何とか追いかけていた俺達。
絵里の元へと辿り着くため、必死だった俺達の、出鼻をくじく様な出来事が起こるとは、まだ誰も知る由は無かった。
「…あと少しで、絵里のいる場所に着くよ!」
エリの言葉は、もうすぐ着くという安心感か否か分からんが、何処か自信に満ちていた。
だが、此処で俺の脳内に、ふと疑問が沸いたので、走りながら聞いてみる事にしよう。
「…なあ。本当にこの先に絵里はいるのか?」
「どういう意味だ?」
「…私を信用してないの?」
俺の質問に、久藤とエリの足がピタッと止まった。
その表情は疑問に満ちていて、俺は、慌てて弁明をする必要が生じてしまった。
「違う違う。絵里は誰かに襲われてんだろ?じゃあ、とっとと逃げてんじゃないのか?」
自分の意を伝えると、二人は納得した表情になる。
そして、俺の疑問に対する答えを持っているエリが、再び走り出しながら答えた。
「…それなら大丈夫。…一種のテレパシーみたいな物かな?私と絵理の精神は繋がってるみたいだから、場所ぐらいは…ね」
エリは元の表情に戻ると、ウインクをしながら説明した。
…しかし、絵里の時より、エリは表情がコロコロ変わるな。
「…じゃあ、向かっている先に間違いは無いってこったな」
久藤が尋ねると、エリは大きく頷いた。
「よっしゃ!後少し、ペースを上げるとしますか!」
久藤が腕を天に向かって突き上げ、宣言する。
こういう時、いつも場を上手にまとめ上げるのが久藤だ。俺はよく知っている。
俺とエリが頷き、再び走り出そうとした、その時だった。
「…ようやく見つけたぞ」
「…!逃げて、二人とも!!」
突如聞こえた声に反応したエリは、俺達に逃げるよう促すと、いきなり突き飛ばした。
「…ウオッ!?」
「何する…!?」
言葉が出て来なかった。
久藤も同じく、驚きの表情と共に、呆然としている。
無理は無い。なぜなら…
先程まで俺達3人がいた位置に突如として巨大な火柱が発生していたからだ。
…例えるなら、噴火だな。
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