WAKE UP

13/19
前へ
/37ページ
次へ
火柱が収まった後、エリの姿はもう其所には無かった。 「…拍子抜けだな。能力を全く使わずに消えてしまうとは…」 「……!!」 俺は、込み上げてくる衝動を抑え、突如表れた男を睨む。 相手が常識外れな力を持っている可能性が高いので、下手に近づくと危険だからだ。 本当なら、いますぐにでもあの男を殴って、気を晴らしたいのだが…幸いに俺の脳は、冷静に状況を把握出来ていた。 「…!あの馬鹿っ!!」 …そうだった。奴を先に止めるべきだった。 こんな状況下でも、無謀に突進する様な奴を、俺は一人知っていたのに…。 「ウオオオオッ!!」 …久藤だ。 何をしでかすか分からん奴に、久藤は無謀にも、殴りかかろうとしていた。 「…遅い!」 しかし相手は、久藤が来る事を分かっていたかの様に体を回転させ、久藤の顔面に回し蹴りを叩き付けた。 …なんだ、この常軌を逸した戦いは。もはや喧嘩のレベルでは済まない…ん? あの男はともかく、久藤はどうして一瞬であんな所まで移動出来たんだ?ご丁寧に後ろに回り込んでまで。 「くっ…!」 吹き飛ばされた久藤が、上手い具合に俺の方へと飛んで来る。 「…お前達も、力に目覚めた者か。ならば、私と戦え!!」 男は、そう言うと両手を俺達の方に向けた。 「ハアアアア!!」 叫びと同時に、男の両手から、炎が放出された。 「…くそ!何なんだ一体!?」 「ゴタクはいいから、さっさと避けろ、狩谷!!」 「ウオッ!?」 久藤に引っ張られた俺は、間一髪の差で炎を回避した。 …やはりおかしい。久藤の身体能力に異変が起こったとしか思えんな、こりゃ…。 元より俺と同じ様に身体能力は高かったが…先程の力や速さは人間業じゃあ不可能だ。 「何やってんだ!」 そんな事を考えていると、ふと久藤の声が聞こえ、俺はもう一度、強い力で引っ張られた。 あの…結構痛いんですけどね、急に引っ張られるの。 俺がいた位置に、再び火炎放射が轟音を上げて通り過ぎる。 「…………」 …俺は、額に流れる汗を拭う暇もなく、焦げたズボンを見て、これは現実という事を、嫌でも思い知らされた。 「馬鹿野郎!死にたいのか!?」 「…んな訳あるか。それより、お前一体、どうしたんだ?」 俺はそう言うと、先程から驚異の身体能力を発揮する、久藤の目を見た。…もとい、見てしまったという方が正しいだろう。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加