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「…起立、礼」
「ありがとうございました」
授業の終了を告げるチャイムが鳴り、担任が事務連絡等を全て言い終わると、クラスの委員長が習慣的なフレーズを告げ、大半の生徒が解放された様に、教室から出ていく。
「…………」
しかし俺は、この後に予定が入っていた為、自分の席に座りながら、肘をついて、ただボォーッと外を眺めている。
「…どうした、狩谷。えらく、呆然としてるじゃねぇか?」
数分もしない内に、髪の毛が、デフォルトで逆立っている男が俺に話しかけてきた。
「…今日は、何処の部活だったっけ、久藤?」
俺は、先程話しかけてきた、今年でもう付き合いが四年になる男に尋ねた。
…ああ、そういえば、自己紹介がまだだった。
俺は、狩谷翔護(カリヤ ショウゴ)という。自分で言うのも何だが、有名私立高校に通う一年生だ。
そして、隣に立つツンツン髪の男は、久藤直哉(クドウ ナオヤ)。見て分かる通り、同級生である。
こいつとは前述した様に、中学からの馴染みで、四年連続クラスが一緒という、奇妙な繋がりがある。
此処で俺達の事を知ってもらう為に、過去話を一つしてもいいのだが…話が脱線してしまいそうだ。元に戻そう。
俺が尋ねると、久藤は呆れた表情を浮かべた。
「…全く、毎回の事だが、いい加減自分の受けた依頼の内容位覚えておけ」
そう言うと久藤は、俺に向かって赤い布切れを投げてきた。
「…ワプッ」
俺は実に間抜けな声を出して、顔に掛った布切れを取る。
その布切れを広げて見ると、通気性の良さそうな生地の真ん中に、デカデカと数字の5がプリントされた、ノースリーブであった。
「…ああ、そうか」
俺は、その服―というよりユニフォームを見ると、自分が何処に行くべきなのかを思い出し、それを口にした。
「今日は、バスケ部の練習試合だったか」
「そうだ。さっさと体育館に行って、体温めようぜ」
気がつけば、久藤は小脇にユニフォームを抱え、既に準備万端の状態であった。
「……へいへい、分かったよ。ちょっと待ってくれ」
俺は久藤にそう告げると、重い腰を上げ、制服のポケットから廊下に設置されているロッカーの鍵を取り出した。
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