37人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうするの、狩谷!行くの、行かないの?」
「ええとだな…」
五時間目以降俺が無事でいる為に、どのような答えが最も適当なのかを考えていると、救いの声の様に、俺の耳にチャイムの音が入ってきた。
そして、チャイムが鳴り終わると同時に、英語担当の教師、増岡が入ってくる。
「…もう!次の授業が始まる前に決めておいてよね!」
そう言い残すと絵里は、周りの生徒と同じ様に、慌てて教科書等の書籍を取り出した。
「…さて、どうするかね」
英語の授業中の話である。
増岡の法則では、今日は俺には指名されない日だったので、適当に黒板に書かれた内容を板書しながら、先程の絵里の問いの答え方を考えていた。
いや、答えは決まっている。
好きなバンドのコンサートを、異性と二人きりで行くんだぞ?
これを断る人間がいたら、是非とも下の宛て先まで送って来て欲しい。
…いや、書かないよ?
そんな事を考えている内に、いつの間にか、五時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。
…仕方ない、ベタだが、小声でバレない様に了承するという、古典的な方法で行くしか無い。
「…おい、絵理」
「決まった、狩谷?」
そんな俺の健気な努力虚しく、絵里はよく聞こえる声で、俺に尋ね返して来た。
ああ…また視線が集まったよ。
…何か、どうでもよくなった。
「…勿論、行かせてもらうさ。一緒に楽しもう」
若干、開き直った感で言うのがポイントだ。
…周りの視線?
はっ、知ったものか。
俺の返事を聞いた絵里は、今日一番の笑顔を俺に向けた。
「うん、分かった!じゃあ、ちゃんと予定空けといてね!忘れちゃダメだよ!!」
そう言うと絵里は、本当に嬉しそうな表情でPUMPの最新の曲を鼻歌で歌いながら、六時間目の授業の準備をし始めた。
…ざまあみろ、男子ども。何時でもかかってこい。
正々堂々のタイマンだったら、一日一回の制限付きで、受けて立ってやる。
最初のコメントを投稿しよう!