41人が本棚に入れています
本棚に追加
『なんでィ。留守電か。』
聞き慣れた少しガキっぽい声がスピーカーを通して聞こえ始める。
『あー、時間ねーんで手短かに。
なんかこれから山ん中調べるんであんまし連絡取れなくなるそーですぜ。ただでさえ電波悪ィっつーのにふざけた話でしょう?
だから手紙書くんで待ってて下せィ。
土方さん…、早く帰りてーです。
アンタの間抜けな面見ねーとどうも調子狂うんでね。
なーんて嘘でィ。
声、聞きたかったんだかんなコノヤロー。
アンタに、会いたい。』
愛してます。
そう告げると、機会的な電子音が鳴り響いた。
「バカヤロー。」
どこが手短かだ。
アイツが長ったらしく語るのは性じゃないのを知っているから、寂しいのかなんて考える自分に苦笑が漏れる。
もう内容を覚える程に何度も聞いたフレーズは、自然と指をリダイアルボタンへと導くが、大抵が形式的な圏外を知らせるメッセージで、たまに繋がっても留守番電話案内だけ。
本当に聞きたい声はもう一ヶ月も聞いていない。
留守電に繋がるたび、ピーッという発信音を聞きはするものの、数秒後には通話オフ。
何を喋っていいのかわからなくて。
でも、そろそろ…。
トゥルルルルと数回鳴った後、今日は運よく留守電に切り替わり、ピーという合図が鳴り響く。
「…総悟、元気か?こっちは元気だから心配すんな。
無理、すんなよ?
っつーか、手紙。来ねーんだけど、出したのか?
まぁ忙しいんだろーからしゃーねーけど。
俺だってなァ、
声聞きたいんだよバカヤロー。
悔しかったら電話出やがれ。
じゃぁな。
俺も、」
最後の一言に躊躇う。
「俺も、」
『俺も、なんでさァ?』
??えっ…。
-----------
やっと、本当の声。
(続く!)
最初のコメントを投稿しよう!