39人が本棚に入れています
本棚に追加
扉の先には廊下はなく、小さな小部屋があり、一人の老執事のような白い髭を蓄えた、身なりのいいおじいさんが立っていた。
おじいさんは深々と礼をして挨拶をする。
「私、女神アズマリアに仕える名をミルコといいます。あなたは1101番様でございますね?」
「アズマリア?」
「先ほどの少女の風貌をした神のことでございます」
特に疑問を抱かず、1101番はミルコに尋ねる。
「で、僕はどうしたら?」
ミルコはどこから取り出したか、パンツに黒いズボン、そして新品であろう匂いが漂うシャツに、これまた黒いジャケットを手渡した。
「これがあなたのここでの正装でございます」
1101番は自分が裸なのは気にしていなかったが、服を受け取るとさっさと着替えた。
着替えながら1101番は尋ねた。
「僕に名前はないのですか?」
「下界に降りたらあなた様の姿に合った名前をお考えになれば、よろしいかと」
「どういう意味ですか?」
ジャケットに腕を通しながら、1101番は尋ねる。
ミルコは服のシワを正すように、ジャケットを引っ張りながら答える。
「あなた様が下界のどこに降りるか、対象者が誰か、によって一番適切な外見が与えられます。だからその時にご自分で名前をお決め下さい」
1101番は最後に軽くズボンをはたき、答える。
「わかった。で、これから僕は何を?」
ミルコは指を鳴らした。
するとミルコは古ぼけた茶色いスーツに身を包み、ステッキを紳士らしく手に持った姿に変わっていた。
「初めてなので、わたくしが説明がてらお供します」
そう言うと、ステッキを高く上げ、振り下ろし、石の床にカツンと音を鳴らした。
その瞬間、石造りの部屋は溶けるように消えて、視界が回り始めた。
こうして1101番は下界へと向かう。
最初のコメントを投稿しよう!