39人が本棚に入れています
本棚に追加
トミーはソールリーダーをジーパンのポケットに入れると、辺りの様子を見ながらミルコの出方を待っていた。
すると、驚いたことにミルコはまるで夜の闇に同化するように消えてしまい、ミルコが立っていた場所には財布が残されていた。
トミーは慌ててポケットのソールリーダーに手を触れる。
『ミルコ?』
トミーは頭の中で念じた。するとすぐにどこからともなく、ミルコの声が響いてきた。
その声は通りの静けさを打ち破りかねない大きさだったので、トミーは少しあたふたとした。
『トミーさん。そこの財布は自由にお使い下さい。私はしばらく様子を見さしてもらいます』
トミーは少し一人を心細く感じたが、空も白んできたので、財布を拾い、朝食を食べる店を探すために朝もやの中を歩き始めた。
ソールリーダーをズボン越しに軽く叩くと、トミーは死神は腹が減るのかな、と思いなんとなしに自分がさっきまでいたかもしれない空を見上げる。
そんなトミーの表情にはまだ何も知らない好奇心という無知な光が朝日に照らし出されている。
最初のコメントを投稿しよう!