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そこは全てが曖昧だった。自分と風景の境界線はぼやけ、自分が風景に同化しているのか、風景が自分の中にあるのかもわからない。
辺りは水の中で目を開けたみたいにぼんやりしていた。
そしてそこにいる、形も不確かなそれは自分が何なのか、いつから考えているのか、何もわからなかった。
それの目にはただ淡い光だけが映り、他に何かがいるのかどうかもわからない。
それはなんとなしに考える。自分はさっきここに来たのか、それとももう何百年もいるのか。
それの問いに答えられる者はいない。
一体どのくらい時間が経ったのか、それに語りかけるような優しい声が響いた。
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