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「起きなさい。1101番」
それはおそらく表情があれば、驚いた顔をしていただろう。
優しく凛とした声がさらに響いた。
「目覚めなさい」
声は何度も何度も辺りにこだまして、それに対するように、あいまいだった風景が徐々に輪郭を帯びてくる。
そこは気付いたら、石造りの洋館の廊下のような場所だった。
窓がなく、少し暗かったが、見えないほどではない。
「来なさい」
磨かれた床がそれの姿を反射したので、それは初めて自分の姿を認識した。
腕は白い骨がむきだしで、それは自分が骸骨なのだと気付いた。
だからどうだというわけではない。
元の姿がわからないから、取り乱しようがなかった。
それはひとまず声のするほうに向かった。
自分の骨が床と鳴らす音を物珍しげに聞きながら、一歩一歩ゆっくりと。
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