38人が本棚に入れています
本棚に追加
すっかり夜も更けたある満月の晩。
カイネ・バレンスタシアは、魔術学院の所有する広大な広場の中央でただ独り、黙々と何かを呟いていた。
大きな瑠璃色の瞳をらんらんと輝かせ、地面に触る程長いゆるやかなウェーブヘアを金色にはためかせながら、彼女は両手を天に振りかざしていた。
「深淵に潜む愚者共よ聞け。我の甘美にして神聖なる言霊に狂喜乱舞し平伏すがいい──」
そして、カイネは自らが徹夜で作りあげた詠唱律を、途切れることなくすらすらと並べていく。
カイネのすぐ足元には人間が4、5人は楽に納まるだろう巨大な魔法円が描かれ、彼女の言葉に共鳴し、青白く発光している。
魔法円。
それはチョークやペン、または血液などで円を描き、その中に星や多角形といった、魔術的意味をもつ図形を描き出したもの。
魔法円にはヘキサグラムやペンタグラムなど、様々な種類がありそのそれぞれが魔術儀式において、重要な意味を成す。
そして、カイネの目の前に描かれている魔法円もまた、ある魔術儀式において必須とされるもので、つまりカイネはある儀式の最中だった。
最初のコメントを投稿しよう!