第十三章 衛星

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ワタル 「リー!!」 ワタルは、リーの名を呼んだ。しかし、もはやリーにその声は届かない。 タダシ 「ようこそ…最終ステージへ」 タダシはPCのENTERキーを押して、パネルを遠隔操作した。 ミサ 「体が…重い!?」 ワタルとミサは、跪いた。 タダシ 「ただいま、強→獣・中→異・弱→病です。ワタルの黒ずみは、肩くらいか?ミサは…すでに首まできてるな」 這いつくばりながら、ワタルはレナに声をかける。 ワタル 「生きてるか?」 レナ 「ギリギリだ…まったく、とんでもない奴とペアになったわ…」 レナは、簡単にリーの事を伝えた。 タダシ 「ショッキング!って顔をしてるな…ワタル」 嘲笑うタダシを、ワタルは睨みつける。 ワタル 「お前は…本物の兄貴なのか?」 タダシ 「違う…私は、お前の兄ではない。私はお前だ!」 ワタル 「意味が分からないな…」 タダシ 「教えてやる。見ろ…」 タダシはPCの上に置いてある果物ナイフで、自らの胸を切り裂く!傷口からは、一滴の血も流れない…体の中には人工の臓器が蠢いていた。 ワタル 「な…にぃ!?」 タダシ 「クローン技術…それが、私の親の名前だ。私は、お前のクローンさ」 呆然とするワタルに、タダシは話を続ける。 タダシ 「お前は…臓器のほとんどが機能していない未熟児として産まれた。 当時の医学では、助からない状態だった。 しかし、お前の両親は…どうしてもお前を生かしたかった。 そして…クローン技術を研究している特殊機関に、お前を実験体として提供した。 お前は皮膚の一部をとられ、コールドスリープする…そして、その皮膚から私が誕生した。 ほんの少し肉体を強化されて造られた私の体からは、臓器が奪われ…お前に移植された。 私は、お前の為に造られた。しかし、お前の両親はそんな私を人工臓器を使用する事で生き長らえさせた。 私は両親の愛を感じて、できるだけお前に優しく接した。 しかし、不思議な事が起きた。同じ人間のハズなのに、能力に差が生まれ始めた。 私の成績が上の上なら、お前は中の下…運動も、勉強も…私の方が優れていた。 しかし、これはこれで良い。頑張れば、もっと両親に愛されるのではないかと考えた。 私の才能は、ゲームクリエイターとして開花し…いつしか、天才と呼ばれるようになった。 しかし、両親の愛は常にお前に向いた…その時、私は気がついた。 私は、お前という星の…衛星にすぎないのだと…な」
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