『黒い影』

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で、その夜    母さんから電話が入った。 『お母さんが退院する時にね   沢山の友達が玄関まで   見送りに集まってくれてさ   後ろの方に山ちゃんポツンと  点滴してる身体でシンドイ中  見送りに来てくれたんだ。』 『話かけなかったの?』 『泣きそうな顔してたから   母さんの方から近づいて     山ちゃんと話したよ。』 『寂しいって言ってたしょ?』 『チーちゃん退院したら   また私1人になるわ…。         と泣いてた。』 『そっか、寂しいんだろうな。』 『旦那さんは他界してるし   息子さん3人いるけど   所帯持って独立してるから   山ちゃん独り暮らしなんだと息子さん方と仲悪いらしいし…』 『そりゃ寂しいと泣くわな。』 『お母さんの携帯番号と    自宅の電話番号書いた     メモ渡しといたんだ。』 『電話来るだろうか。』 『もう、電話来たもん。』 『なんて言ってた?』 『チーちゃんいないと胸に   ポカーンと穴あいた感じで      もう駄目だわって。』 『駄目だわってかい💧     それこそ駄目じゃん。』 『山ちゃんね、直腸癌なんだ。』 『胃腸炎じゃなく直腸癌!?』 『普通じゃない痩せ方みて  お母さん気付いてたけどね。』 深いタメ息が出た。 『お母さん、山ちゃんのこと  心配でホっとけないんだ。  縁があるんだろうね、きっと。 マメに連絡取り合って行くから 來は題目をガッチリ送って。』 『了解、ガッチリ題目      送らせてもらうわ。』 病み上がりにも関わらず   やる!と決めたことは    やり遂げる行動派の母親。 唯一尊敬できる部分。 次の日から山田さんを  励ましに病院へ通い始める母。 行けない日は必ず電話して     話を聞いていたようだ。
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