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―魔界ギルデモルト―
ベルムガントでも有数の雄大な自然を誇る景勝の地。
貴重な動植物の宝庫で、特殊な進化をしてきた“魔獣種”の主な棲息地でもある。
六界の中でも比較的原始的な生活レベルで、厳しすぎる自然環境も相まって、魔界の住人は度々野蛮人と蔑まれる。
しかし、それは一方的な偏見に過ぎず、人間とは趣向の違う高度な文化を持っている。
そんな魔界のほぼ中央に位置する王都『リシュヒリア』の東部に位置する魔境『嘆く者の森』に彼は居た。
人間でありながら魔界の王子である異質の貴公子アルバート・グリムスロードが。
木々が陽の光を遮り、ジメジメとした森の最深部で、彼は俗にモンスターと呼ばれる“魔獣種”の上級種である【大いなる獣】ベヒーモスと対峙していた。
およそ民家の1.5倍はありそうな巨体、敵を切り裂くには十分過ぎる程の大爪、大木をも薙ぎ倒せる刺付き尾、強靱な下顎にピッタリな大牙、禍禍しい程に奇怪な照りを放つ大黒角。それらは見る者に畏怖の念を抱かせるのに充分過ぎる程であった。
そんな魔獣を相手にしても彼は怖じけず、逆に獲物を狩ろうとする獣の様な闘気を全身から滲ませ、不敵に笑っていた。
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