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未来は雪斗の後に続いて教室へ入った。
「みんな席に着いてー」
先ほどまで仲のいい友達と話したりと騒がしかった教室は、雪斗の一声でみるみるうちに静かになっいく。そして職員室と同様、雪斗の後ろにいる見慣れない生徒へと視線が集まった。
「今日はみんなに新しい仲間を紹介する」
『木下未来』
雪斗は黒板のど真ん中にでかでかと未来の名前を書いた。
「木下、軽く自己紹介してくれ」
「はい」
雪斗は教室の入り口に立っていた未来に手招きして、教壇の上へ上がらせた。
「木下未来です。人と接するのがあまり得意ではありませんが、よろしくお願いします。」
「はい、拍手。じゃあ木下は…一番後ろの空いてる席に座って」
未来は雪斗が指差した席へうつむき加減で向かうと、黙って腰を下ろす。
窓際の一番後ろの席。結構マシな席になれた。ここなら授業中に寝てたって簡単には分かんない。小僧だけどこればっかりは君に感謝、なんてね。
朝のホームルームは今日の予定や担任の話であっという間に終わった。ホームルームの次は短い休み時間。未来にとって転校してきてこの時ほど嫌な時間はない。
どこから来たの?
なにか部活や?
彼氏とかいるの?
困った事があったら言ってね!
はぁ、呆れるぐらいワンパターンな質問や言葉。「ほっとく」って行為を知らないわけ?それともこれは転校生の宿命?だとしたら神様はよっぽど暇なのね。こんなくだらない宿命を与えるなんて。
「トイレは…どこ?」
「トイレはね、教室を出て真っ直ぐ行って左側だよ」
「そう、ありがとう」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫、一人で行ける」
未来は大勢の生徒の群をかき分けるようにしてトイレへ向かった。
やっぱトイレが一番の口実になる。自然だし、なにより無理矢理にでも着いていこうなんて人いないもん。
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