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短い休み時間がまもなく終わる、という時間まで未来はトイレにこもっていた。鏡で髪型をチェックしたり、制服のリボンを直したり。一応トイレに来たのだから用も済ませた。
教室に戻ると再び生徒の視線が未来に集中する。と同時に未来の表情が若干険しくなった。
ミスった…。ギリギリに戻ればみんな席に着いてるもんだって思ってたから気を抜いてた…。
《ずっとトイレにいたのかな》
《うわ~、改めて見ると綺麗な黒髪。髪が伸びる人形みたい》
《初っぱなからトイレって、どんだけ緊張してんだよ》
《あ、1時間目始まるし。一発目から英語かよ》
落ち着け、落ち着け、落ち着け…!何も聞こえない。大丈夫、落ち着け。
未来は無意識のうちに両耳を手で押さえていた。
「…ぶ?」
「ねぇ、だ……?」
「木下さん、大丈夫?」
あ……
未来は耳から手を外しパッと顔を上げた。みんなが自分を見ている。
「どうしたの?耳が痛いの?」
「あ…ごめん。大丈夫、ちょっと耳なりがしただけ」
未来は少しふらついた足取りで自分の席へ着くと、小さくため息をついた。
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