転校生

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私は変。誰よりも、何よりも…変。だって人が考えてる事が分かるんだから。変でしょ?     未来は机に1時間目の英語の用意をしてボーと外を眺めていた。外で体育をしているクラス、犬を連れて歩道を散歩する人。誰もがやらなきゃいけない事や日課をこなしている。     小さい頃は面白くて仕方なかったけど、今じゃ最悪。常に聞こえないように気を張ってないと、どんどん周りの考えが私の中に入ってくる。…さっきみたいに。ほんと面倒な体質。     にしても、誰が「髪が伸びる人形みたい」よ。人のことを市松人形と一緒にするなって。それに緊張だってしてないから。勝手に決めつけないでくれる?     「おい、木下。聞いてるのか」   「あ、はい。聞いてます」     なに、その顔。「そんな事言って、聞いてなかっただろ」とでも言いたいわけ?   「そうか。じゃあ次の段落を訳してくれ」   「はい」   どうせ出来ないとでも思ってるんでしょ。   「『スミスさんが家を出るとそこには1匹の犬がいました。見ると犬はやせ細って弱っています。スミスさんは悩みました。自分が持っているパンをあげれば…しかし、そうすれば自分が食べるものは無くなってしまう、と』」   「…よく出来た」   あーあ。その悔しそうな顔。人を見くびるからそうなるのよ。     未来は頬杖をついて再び窓の外を見た。先ほど飼い主と散歩していた犬はもういない。     きっと犬はパンを全部貰おうとしてたんじゃない。ほんの少し、一口だけでも良かったんだよ。
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