出会い

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そこに居たのは、ひとりの女性であった。 「あなた様は?」 「高尾山に住んでる天狗ですよ。こんな鼻をしていますけどね」 女性の問いかけに、国高は自分の鼻をさすりながら恥ずかしそうに言った。国高は高尾天狗であるが、彼の鼻は他の高尾天狗のようなすらっとした細長い、嘘をついた時のピノキオのような鼻ではなく、テングザルのような大きな鼻をしていた。 そんな国高を見て、女性はうっすらと笑みを浮かべ、国高の鼻に触れた。 「私は素敵で立派な鼻だと思います。何を恥じる必要がありましょうや。天狗族であなた様しかお持ちではない、世界でただ一つの鼻でございましょう?自信をお持ちになってください。私は鞍馬山の桜花と申します。差し支えなければ、あなた様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」 桜花の言葉に国高は顔を赤くした。 「あなたのような美しい人に鼻を誉められるとは思わなかった。けど嬉しいです。私にとって、この鼻はコンプレックスでしかなかったのですから。あなたの言葉のおかげでこの鼻に自信が持てそうです。私の名は国高。ここは冷えます。早く屋敷へ戻りましょう」 国高がそう言うや否や空が急に曇り、大きな雷が大きな音を立てて落ちた。 「きゃっ」 「大丈夫。私がついています」 雷に驚いた桜花は国高にしがみつき、国高はそんな桜花を優しく抱きしめた。
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