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「まさか、僧正坊が桜花姫を連れて来くるとは思わなかったぞ。20年会わないうちに、あんなに美しく成長しているとは。僧正坊が羨ましい限りじゃ。ワシには娘がおらんからの」
僧正坊は豪快に笑い、飯縄権現の背を叩いた。
「わしとてお主が羨ましいぞ。国高殿は鼻こそ不細工だが、好男児ではないか。彼は文武両道で誰よりも実直で慈悲深く決断力がある。一族全員からの信頼も高い。戦の時は修羅のごとく戦うが、普段の彼は物腰が柔らかく女受けが良い。女共は、国高殿の姿が見えるだけで、黄色い歓声をあげるぐらいだ。これほどの後継者はそうはいない。我が息子も見習ってもらいたいものだな。私の跡目という自覚がないのか、毎日のように遊びほうけておるわ」
そう言うと僧正坊は溜め息をついた。
飯縄権現は、そんな友を励まそうと酒を僧正坊の杯につごうとした瞬間、大きな雷が落ちた。
「桜花姫は大丈夫かの?ヒトの血が流れておるから我々に比べると相当妖力が弱い。しかも、気がとても小さいという話じゃないか」
「国高殿が一緒じゃろうて大丈夫じゃろ。これも良き修行だ。せめて少しぐらい、物事に動じない強い心を養って貰わねば、嫁に行った時が困る」
僧正坊の言葉に、飯縄権現は苦笑してしまった。まだ嫁に出す気もないくせして、嫁に出た後の心配とは。
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