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国高と桜花は雷が落ち、暫くしないうちに雨が降り出したせいで、人間が建てた休憩所で雨宿りをせざるを得なくなった。
桜花は天狗としては珍しく臆病な性格らしく、遠くで鳴っている雷の音にも怖がるぐらいだった。
そんな桜花を胸に抱き
「大丈夫」
と何度も言って、彼女の頭を撫でてやるのだった。
「お恥ずかしい…」
「なにがです?」
「たかが雷一つに怖がる自分がです。国高様は天狗のくせして、雷を怖がる私に呆れているのではありませんか?」
「そんな事はありませんよ。私はそんな貴女が可愛らしいと思います。しかし、意外でしたね。私に会う者は皆、最初は私の鼻を見て怖がるのに、貴女は怖がらなかった。そんな貴女が雷が怖いとは」
国高が笑いながら言うと、桜花は頬を染め微笑みながら国高を見上げ彼の頬に触れた。
「私は本当に臆病なのです。今でも雷は苦手だし、山に住んでいるのに、蛇や虫が未だに怖いんです。初めてお会いする殿方だって怖いわ。けれども、私は何故かあなた様を怖いとは思わなかった。あなた様のその優しい瞳を見たらどうして恐ろしいと思えましょう」
国高は自分の頬に触れている桜花の手を握りしめ彼女を愛おしそうに見つめた。
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