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「本当にどうしたの?何もないわけがないわ」
「本当に何でもないのです」
桃花の問に桜花は弱々しく微笑んだ。
その微笑みの奥に、深い悲しみがある事を桃花は見逃さなかった。
「国高殿の事?」
桃花が国高の名を出すと、桜花の表情が凍りついた。
「やっぱりね。国高殿と何かあったの?」
桃花の問いかけに桜花は首をふり、悲しそうな表情を見せた。
「いい加減、捨てなければならないのです。この想いは、あの方にとって迷惑でしかないのですから…」
桜花の言葉に、桃花は面食らってしまったが、すぐ優しい笑みを浮かべ、桜花の瞳にたまった涙を拭った。
「やっぱり、貴女は国高殿が好きなのね。初めて会ったあの時から変わらず。大丈夫。義姉様に任せておいて。可愛い貴女を国高殿以外の殿方の元へと嫁がせたりしない」
「義姉様…」
桃花の言葉に、ようやっと桜花は柔らかい笑みを浮かべた。
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