第壱章━━出逢い━━

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彼女は今まで忍として暮らしていた。 主に従うだけの、感情の無いただの道具として扱われていた。 漆黒の髪を結わずに垂らしていた。 髪の長さは腰辺りまである。 夜の様な冷たい瞳。 その瞳の色は時折月の様に金色に光る。 彼女を見るだけで"美しい"そう思わざるを得ないだろう。 それほどまでに美しかった。 そして、彼女は滅多に本名を名乗らなかった。 その為、いろんな人に化けている事もある。 江戸で名乗っている今の名は"ユナ" 「今日はどんな追っ手がくるんだ?」 暗い部屋に座り、片手には刀を持っていた。 服装は膝までしかない、黒い着物を着ていた。 漸く来たか… 戸の前で、微かに気配を感じた。 ユナは刀を鞘から抜き、立ち上がった。 スッ 「やぁ!!こんばんは夜の弧蝶さん♪」 「変わった奴が来たな。」 「そんなこと言わないで!!」 背の高い男だった。 ユナは暗い所でも目が効く。 「何をしにきたんだ?」 分かっているがな… 今日は何処からの追っ手だ? 忍なら忍の道具を使うべきだろう。 「尊皇攘夷ってね♪」 そう言いながら急に斬りかかってきた。 ユナは意図も容易く交わした。その交わし方が "夜の空を舞う蝶のようだ…" 男は頭の中でそう呟いた。 「余所見は…禁物だぞ?」 次はユナから斬りかかった。 男は自分の刀でユナの斬りかかってきた刀を受けた。 そしてそのままユナを押し倒した。 「くッ…」 ユナは男から離れようと暴れる。 しかし男はユナより力は強く、そう簡単には離れられない。
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