第壱章━━出逢い━━

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「…ねぇ、君は幕府と尊皇攘夷、どっちなの?」 ユナは鼻で笑って答えた。 「私は幕府も長州の仲間にもならない。大切なものを守るために刀を振るうんだ。」 ユナはそう言って、得意の体術を使い男から逃れた。 「大切なもの?君には、大切なものがあるの?」 大切なもの…… 私はそんなもの持ち合わせてない… 押し黙るユナを見て男は刀を鞘にしまった。 「なら、俺についてこない?一緒に世界を見よう。」 男はそう言って私に手を差し出した。 私は始め、会ったばかりの奴は信用できなかった。 「どうしたの?」 「お前は誰だ?」 「あぁ…名前?俺は吉田稔麿(ヨシダトシマロ)。」 吉田…稔麿…… 吉田稔麿?? 「あの…尊皇攘夷の?」 吉田稔麿と名乗った男は深く頷いた。 「何でこんなとこに…」 「君に用があったから。」 「暗殺のか?」 ユナの言葉に稔麿は苦笑いした。 「でも結果的に、君を拾う事にするよ。」 「何故?」 稔麿は先ほどとは違う笑みを見せて言った。 「ただ…君が気になったから。」 え………!? 「君に一目惚れしたのさ。」 何言って… 「君の名前は?」 ハッ 「本名か?」 ユナの言葉に声を上げて笑った。
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