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「そうよ」
母さんはコクリと頷きもう一度囁く。
僕は戸惑ったが、結局母さんのなすがまま、大きく息を吸い込み、フゥーと一息で火を掻き消した。当然火が消えると、明かりを失った家は真っ暗になる。
一瞬、僕はわからず不安になったが、母さんはすぐに電気をつけた。
そして母さんはケーキを置いて、振り返り僕の高さまで屈むとしっかりとした口調でこう言った。
「誕生日おめでとう。シュンちゃん」
突然の事に、僕はその言葉の意味が理解出来なかった。
それを見た母さんがはにかんだ笑みを浮かべる。
「自分の誕生日忘れちゃった?」
これで、やっと思い出した。
ああ、今日は自分の誕生日何だと……
「じゃあ、あの卵は…」
唐突に僕は口を開く。
「やっぱり市販のは高いし、家で作ったんだけど……ちょっと失敗しちゃった」
母さんは苦笑する。
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