子供の駿一

10/12
前へ
/13ページ
次へ
「そうよ」 母さんはコクリと頷きもう一度囁く。 僕は戸惑ったが、結局母さんのなすがまま、大きく息を吸い込み、フゥーと一息で火を掻き消した。当然火が消えると、明かりを失った家は真っ暗になる。 一瞬、僕はわからず不安になったが、母さんはすぐに電気をつけた。 そして母さんはケーキを置いて、振り返り僕の高さまで屈むとしっかりとした口調でこう言った。 「誕生日おめでとう。シュンちゃん」 突然の事に、僕はその言葉の意味が理解出来なかった。 それを見た母さんがはにかんだ笑みを浮かべる。 「自分の誕生日忘れちゃった?」 これで、やっと思い出した。 ああ、今日は自分の誕生日何だと…… 「じゃあ、あの卵は…」 唐突に僕は口を開く。 「やっぱり市販のは高いし、家で作ったんだけど……ちょっと失敗しちゃった」 母さんは苦笑する。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2430人が本棚に入れています
本棚に追加