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「ねぇ~おかーさん、小百合ケーキ食べたい」
今まで忘れられた小百合は、まるで自分の存在を伝えるかのように母さんの裾を引っ張りながらケーキを催促する。
母さんは「はいはい」と言って、小百合の頭を撫でて立ち上がって歩こうとした。
「母さん!!」
それを僕は必死に止めた。
今言っとかないともう一生言えない気がしたからだ。
「その、えっと…ごめんなさい」
振り向いた母さんに、戸惑いながら、最後は小さくて全く聞こえないような声で、僕は力を振り絞って謝った。
本当はもっと大きな声ではっきりと言うつもりだった。けど、どうしてか声がでなかった。
それでも母さんはちゃんと聞いてくれていたようだ。
僕を強く抱きしる。
「もういいのよシュンちゃん。でもこれだけは覚えていて。
確かにうちは貧乏かも知れない。何も無いかも知れない。それでも世界で1番貴方は愛されているということを」
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