子供の駿一

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「なぁシュン。何でお前そんなに恰好に気を使わないんだ?」 それは天気のいいある日の仕事前の楽屋でのお昼、仁が発した言葉だ。 「何でって?」 椅子に座りながら図書館で借りた最近話題の恋愛小説を読んでいた僕は、仁の言葉に振り返った。 「いや、お前顔のいいのに何故そんなに恰好は気を使わないのか?と思ってな」 「僕もそれは思う」 熊の人形を抱きしめながら光がすかさず相槌を打つ。 「別に。 特に理由はないよ」 サラっと言ってまた小説を読み始める。 仁と光はそれで納得したのかもう何も言ってこなかった。 「(ホントはあるんだけどね)」 ページをめくりながら心の中で少し上の空。 あれは、もう大分昔の話になる。
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