子供の駿一

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でも、お金が無かったのにはかわりなかった。いやむしろ僕がバイトしてなかった分、今より酷かったかも知れない。 「ほら見てシュンちゃん」 母さんが冷蔵庫の中から何かがさごそと取り出し、それを大事そうに掴むとクルリとこちらに振り返った。 振り返った後に僕の目に飛び込んで来たのは、10個入りの卵のパックである。 「今日は卵が凄く安かったの」 母さんは終始笑顔で話す。 ――何が、そんなに楽しいんだよ―― 「何でそんなに笑ってるんだよ……」 「えっ……」 腹からの押し殺したような声に母さんが少し戸惑った。 「何でそんなに笑うんだよ!!」 感情が、いきなり抑え切れなくなって爆発してしまった。部屋全体に響き渡るかのような大声。
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