子供の駿一

7/12
前へ
/13ページ
次へ
だがその睨みは、母さんの鋭い視線の前では効果をなさず、僕はすぐさま目を逸らした。 そして…… 「母さんの馬鹿やろーー!!!」 僕は逃げ出した。少し母さんの声が聞こえたけど、それは雑音でしかなくただ黙々と振り返らず逃げ出した。 ――だって僕はまだ幼かったんだから―― ―― ― 夕焼けに染まる空が時間を告げ、皆が帰って行く。蝉はその短い生涯を終え、僕の瞳に溜まる暁の涙と一緒にポトリと落ちた。 「母さん馬鹿……」 一人…僕はブランコに揺られながら、俯いて地面を蹴る。 湿った砂は舞う事なく、ガツッと鈍い音を起てるだけだった。 僕は落ち込んでいた。始めてだったんだ、母さんに叩かれるのは。 やがて、太陽すっかり沈み、頼りの明かりが月と電灯だけになった。 夜でも夏は暑い。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2430人が本棚に入れています
本棚に追加