第九章 混沌が支配する夜

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「はははははは!何が『神の代わり』にだ、笑わせるでない!神の力は奇跡と創造、そして再生だ。 破滅と堕落、混沌の類は悪魔の力だ。」 龍姫は一笑した後に聖杯を真っ直ぐに睨み付けた。 そして皆が固唾を飲んで見守る中、彼女は先刻バジリスクを仕留めた時と同じ様に手を伸ばす。 「いい加減に聖杯から出てきたらどうだ?妾を前に姿を偽っていても無駄なのは理解できよう」 ドクン!ドクン!ドクン! 「ぐおぉ!何だ、この鼓動は!」 ガルマは急に脈打ち始めた聖杯に違和感を感じて膝をついた。 胸を押さえて苦しみ始めたガルマを、冷徹な瞳で見つめる龍姫。 透はその隙に鳳を助けて戻って来た。 「鳳、しっかりしろ!起きられるか?」 頬を軽く叩きながら呼び掛ける。瞼に微かな反応があった、死んではいない。恐らく脳震とうを起こしているのだろう。 龍姫はその声を聞いて横目で鳳を見る。彼女から、わざわざ洞窟に助力を請いに来た老人と同じ気を感じる。 (あの老人と縁のある者か?) 龍姫は黙ったまま手のひらを上に向け、霊気を集める。 テニスボールほどの大きさになった光球を、鳳の胸に向けてそっと放つ。 いきなり飛び込んできた光球に驚いた透が慌てて顔を上げたとき、鳳が頭を押さえながら起き上がった。 「う……私、どうなったの?気が付いたらガルマが目の前にいて……そこからわからない」 「鳳、傷は?痛むところはないか?」 透は危害を加えるつもりは無いとみて、龍姫から目を離して鳳に聞いた。 「それが……どこも痛くないわ。小さな傷すら消えてる。こんな事って……ハッ!あれは龍姫!?何故ここに!?」 瞳に飛び込んできた意外な存在に、混濁していた意識が一気に覚醒した!
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