第九章 混沌が支配する夜

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すぐに立ち上がって周りを見渡す。 苦しみ悶えているガルマ、それを冷たく見つめる龍姫、膝をついて困惑しているロイ、そして石像と化した忍……。何が起きたのか全く掴めない。 「鳳、とりあえず落ち着け、いいな?龍姫は何かをしようとしている、それを今は見ているんだ。今のままでは俺達に出来る事が無い!」 目の前に立つ透に肩を掴まれた鳳は、その金色の瞳を見つめ返して頷いた。全てを見てきた彼の忠告は聞くべきだろう。 それにしてもガルマの苦悶が尋常ではない。まるで何かに体を喰い破られそうな暴れ方だ。 実際、彼の体はボコボコと突起が繰り返されており、形を維持できていない! 「一体どうなってるの?」 「俺にも分からない、ロイの様子もおかしい……何か知っているかもしれないが、ゆっくり聞いている場合じゃないな」 そう言ってガルマを見る。 彼の体に明確な異変が起きたのはその時だった! 苦痛の雄叫びを上げたガルマの背から、漆黒の翼が広がる! 頭からは捻れた羊のような角が生え、手がゴツゴツした巨腕に変わる! 『思わぬ邪魔が入った、人の世に干渉するとは龍らしからぬ行為だな』
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