第九章 混沌が支配する夜

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豹変した彼の口から漏れた声は、ガルマ本人の物ではなく、背筋が凍るほどに感情のない声だった。 「やはり悪魔が憑いていたか、聖杯の名を語って随分と魂を喰ってきたのだろう?」 龍姫は平然とした態度で異形となった彼に言った。 『カカカ!人間ほど欲深く他力本願な生物は居ない、神の力と囁くだけで同種の命すら容易く奪う愚か者よ。真の聖杯はこんな物ではないというのに。』 そう言って胸にある聖杯を鋭い爪でコンコン叩く。 ロイが愕然としているのは聖杯の正体を知ったからなのか、それとも仲間達の命はそんな物のために散ったという絶望からなのか?それは分からない。 「そうか、ならばやはり真の聖杯は……キリストの血か」 龍姫は納得したように呟いて髪をかきあげる。 『……そうだ、キリストはマグダラのマリアとの間に子をもうけていた。その末裔こそが神の依り代となるべき聖杯だ。 我等悪魔ですら干渉できない絶対的守護のかかったな』 「それで?お前はこれからどうするつもりだ?妾は契約によりガルマを倒さねばならない。 聖痕の術者と龍を相手に、そんな妖気の枯渇した融合体でやり合うつもりか?」 挑発的に言い放つ龍姫に対して悪魔は笑みを漏らした
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