第九章 混沌が支配する夜

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『コイツは今までで最高に欲深く力のある人間だ、自ら妖魔に堕ち、なおも聖杯を欲する。 魂の回収を果たすまでの利用価値はあるさ』 そう言い残して翼をはためかせる!舞い上がった悪魔は地響きのような雄叫びを上げた! 「往生際の悪い奴め……。」 龍姫はカツカツと音を鳴らしながらロイに詰め寄り、その襟首を掴んで目の高さまで引き上げた。 「お前も気付いているだろうが、聖痕の術者として撃てる攻撃はあと一度だけだ。それでお前の命は尽きるだろう」 龍姫の一言に、透と鳳は驚きの声を上げた! しかし当の本人は知っていたかのように、平然として彼女に返事を返した。 「時間が無いのは承知しています」 「ならばとやかく言うまい。撃って死ぬか、逃げて余生を送るか?」 その問いかけに、ロイは黙ったまま左手の手袋を外し、龍姫に逆十字の入れ墨を見せつけた。 「フ……命を捨てるほどの価値がこの世にあるとは思えんがな。まぁいいだろう、お前がそう決めたのなら力を貸してやる。……それとそこの小娘……」 急に話を振られた鳳は戸惑いながら龍姫を見つめた。 「お前に縁ある老人からの頼みで妾はここに来た。覚えておけ」 「え……?」
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