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『…もーえーわ。
お前傘持て!俺がこぐから!』
…すでに傘は必要ないくらい、
髪も制服もずぶ濡れだった。
「えぇ?はい。」
彼女はきょとんとした顔で慎一を見る。
『お前、名前なんて言うねん?』
後ろに乗った彼女に、
慎一は問いかける。
「えと…美智です。」
『美智やな。』
慎一はそう言って自転車をこいだ。
『女のくせに無茶しよんな。
鼻血まで出すとは思わんかったわ。』
「この前は前歯折りました。」
『――は?』
な、なんて無鉄砲な……
『もう自転車乗るのやめろや。』
「え-
それじゃ不便です」
『前歯ない方が不便やろ!!』
慎一は自転車をこぎながら言った。
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