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その後、蹴られた男の子の右の肋骨が折れてることが分かり、大事件になったという。
勇気の母親が学校にやってきて、校長や担任に謝り、その夕方に男の子の家に謝りに行った。
しかし、勇気は母親には怒られなかった。
母親が学校に来た時に沙紀が事情を説明していたのだ。
沙紀は泣きながら話したという。
その話を聞いた母親は深く頷いて、校長室に向かった。
小学校を卒業して、中学校に入学した後はいつも二人でいたという。
沙紀はあの時から勇気に想いを寄せていたのだろう。
それを表に出すことはなかったが。
そんな二人を周りははやしたて、茶化した。
勇気は笑いながら「そんなわけないだろ」と付き合っていることを否定した。
沙紀は落ち込んだ。
勇気の気持ちは自分には向いてないと。
それからは沙紀の方から誘うことが減った。
昼休みはどこかへふらっといなくなった。
勇気は心配して探したが、いつもみつからなかった。
ある日、いつものように沙紀がいなくなる時、勇気は後をつけてみた。
すると屋上へ出たの出入口の裏側にぽつんと座っていた。
勇気はとなりに腰掛けて聞いた。
「どうしたんだ。最近元気ないな…」
すると沙紀は立ち上がって言った。
「アンタのせいだから…」
「はぁ!?ワケわかんねぇ!!俺が何したんだよ!!」
強く言い返した勇気の言葉に目をうるませた。
「アンタが!!アンタが私のことどうも思ってないって…言ったから…」
「は…!?」
「好きなのよ…好きなの…」
「誰を?」
「アンタを…」
「誰が?」
「私が…」
「何で?」
「何でも…」
そうやって聞き返すことで勇気は自分の緊張を和らげていたらしい。
勇気もずっと沙紀のことが好きだったが、他の奴らと同じ扱いをする沙紀は自分の事を何とも思ってないだろうと諦めていた。
「俺も、お前のことが好きだ」
勇気は泣きじゃくる沙紀を抱き締めて何度も何度も耳元で「好きだ」と繰り返した。
二人はチャイムがなったことも気付かず、ずっと屋上で抱き合っていた。
そして、勇気はこれからずっと沙紀を守ると約束した。
その話を聞いた時、博貴は思わず涙ぐんでいた。
泣き虫な博貴には十分感動的だった。
だからこそ、博貴は二人が好きだった。
この二人とはいつまでも仲良くいたいと思った。
だから今、暗い顔をした勇気を助けてやりたい。
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