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次の日、その次の日も博貴は来る度に「帰れ」と言われ、本当に帰りたくなった。
しかし、負けたくないという気持ちが強かった。
勇気はそれを感じたのか、毎日帰りに誘ってくれて、沙紀を含めた三人で帰っていた。
暫くすると男子達も転校生をからかうのに飽きたらしく、何にもなかったかのように博貴に接した。
勇気がいたからと言っても過言ではないと思っている。
勇気は人一倍他人には無関心で、人一倍正義感が強い。
彼の親はきっと名前を付ける時に今の勇気の様に、何事にも臆さず、悪い事は悪いと言える勇気を持ってほしいと名付けたに違いなかった。
博貴はそんな思い出に浸って自分の気持ちを固めたのである。
絶対に、四人でこの島を脱出するんだと。
その為の第一歩として、明日は島の裏側へ行く。
何かがあるかもしれないし、無いかもしれない。
でも、行かなくてはならない。
そんな衝動が博貴を突き動かしていた。
「勇気、もう今日は寝よう。また明日、色々調べてみよう。だから体力を回復するんだ。大丈夫。俺達は生きて帰れる」
博貴の言葉に勇気は強く頷いて、いつもの明るい笑顔を見せた。
「じゃ、寝ようぜ!!」
「おう!!」
二人は顔を見合わせて笑った。
何の心配もない。
二人の笑顔はそう語っていた。
その日、夜遅くまで真っ赤な炎が煌々と洞窟内を照らしていた。
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