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夏の日差しが四人の身体を焦がそうとしていた。
「暑い…」
高校2年の斉藤博貴(サイトウ ヒロキ)は照りつける太陽を見上げた。
波の音が涼しげに聞こえてくる。
広大な海、鬱蒼と生い茂る林、高くそびえ立つ山。
「そうか…夢じゃなかったか…」
噴き出す汗を拭って、周りを見渡した。
博貴の他にそこにいるのは三人。
博貴の彼女の峰洋子(ミネ ヨウコ)、親友の南田勇気(ミナミダ ユウキ)、その彼女の高橋沙紀(タカハシ サキ)。
たった四人。
そして、この島は無人島のようなのだ。
昨日、島の探索を行い、人のいる形跡を探したがそんなものありはしなかった。
なぜ、俺達四人がこんな目にあわなければならないのか。
博貴は三人の寝顔を見ながらそう思った。
今日はどうしようか。
日もそこまで上がってもいないし、もう一度島を歩き回ってみるか…
博貴は立ち上がってポケットを探った。
右のポケットには携帯電話。
画面はやはり圏外を表示している。
左ポケットには家の鍵。
けつポケットには長財布が入っている。
昨日は気がどうてんしていたから気がつかなかったが、金目の物は何一つ盗られていない。
ますます訳がない分からない。
金品を盗られる訳でもないなんて、おかしい。
じゃあ、なぜ俺達はこんなところへ連れてこられたのだろうか…
博貴は鍵をクルクル回しながら暫く考えていた。
「分かるわけない…か」
諦めた博貴は三人を起こしに向かった。
「ほら、起きろ!!洋子も、勇気も、沙紀ちゃんも!!」
やかましく耳元で騒ぎまくった。
最初に起きたのは勇気だった。
「うるせぇなぁ…もうちょっと寝かせろ、お母ちゃん…」
「おい…俺はお前の母ちゃんじゃねぇ!!」
「朝飯は…」
勇気はまだ寝惚けているらしく、うっすらと目を開けたまま身体を起こした。
「勇気!!起きろ!!」
「うわッ!!何だよ!!」
そう叫んだ勇気は、あぁ…そうか…と肩を落として沙紀の方に歩いていった。
「洋子、起きろ。もう少ししたら出掛けるぞ」
「うん…え!!」
洋子は何で!?といった顔で博貴を見て固まった。
「夢じゃなかったのね…」
「残念だけど…」
『はぁ…』
二人のため息が重なって、空気が一気に悪くなった。
「博貴!!沙紀も起こしたぞ!!」
「あぁ、じゃ、出掛けよう」
博貴がそう言った時一昨日の事が一気に頭の蘇った。
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