無人島

2/12
前へ
/146ページ
次へ
2日前。 博貴を含めた四人は夜の海に来ていた。 新潟県柏崎市の高校に通う四人にとって海は身近なものだった。 親には昔から「夜の海は危険だから近付かないように」と言われている。 確かにいつ波にさらわれるかも分からない。 しかし、夜の海は何となく落ち着くのだ。 駐車場から階段を降りて砂浜へ向かう。 「ドキドキするよね…」 博貴の右手をギュッと握って洋子が呟いた。 「俺は…落ち着くんだ…」 「何で?」 「さぁ…」 「変なの…」 「ま、いいじゃねぇか!!」 博貴は洋子の手を引いて波打ち際まで走った。 「ねぇ…」 洋子が砂浜に腰を下ろして声を掛けた。 「ん?」 「何で波って立つんだろうね…」 「あぁ、そういえばそうだな。不思議だよな…」 博貴も腰を下ろして両足を前に投げ出した。 「俺さ…」 「うん…」 博貴の手が洋子の手に重なった。 「海みたいに大きい男になりたい」 博貴は時代錯誤かと思ったがやっぱり洋子には本当のことを言っておきたかった。 いつだって海に来る度にそう思った。 海のように… 「私ね…」 洋子は周りを見渡してから博貴を見つめた。 「ヒロちゃんのそういうとこ好きよ…」 博貴は驚いて洋子の顔を見た。 ありがとう… 本当はそう言いたかった。 いや、この時に言っておくべきだったのかもしれない。 暫く二人は無言のまま真っ暗な海を見つめていた。 遠くでイカ釣り漁船がネオンの様に光を放っていた。 「博貴ぃ!!」 向こうの方から勇気が走ってきた。 その後ろに沙紀。 沙紀は息を切らせて歩いている。 「沙紀!!走れ!!楽しいだろ!!」 「嫌よ…もう…ダメ…」 勇気はお構いなしで博貴の所へやってきた。 「おい、沙紀ちゃん大丈夫かよ…」 「あ?大丈夫だろ!!アイツ、中学からバスケしてるし!!」 「いや、そういう問題じゃなくてな…」 勇気はワケが分からないといった様子で首をかしげた。 少しして沙紀がやってきた。 「バカ…何で…走るのよ…」 「あ…キツかった?」 「見れば分かるでしょ…」 「えっと…わりぃ…」 博貴と洋子は顔を見合わせて笑った。 何となく幸せな気分になったから。 こんな幸せがずっと続けば良かった。 続けば…
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

323人が本棚に入れています
本棚に追加