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勇気はムシャムシャと果物をかじっている。
滴る果汁もジュルジュルと音を立ててすすった。
「汚ねぇな…」
「喉が渇いてんだ!!仕方ないだろ!!」
確かにずっと何も食べていなかったし飲んでいなかった。
博貴の身体も目の前の果物を欲している。
洋子達は少しずつ少しずつ果物を口へ運んでいる。
「俺ももらうかな」
「おう、食え食え」
そう言われて博貴は果物を一つ手にとった。
真っ赤に熟れたマンゴーの様にも見える。
博貴は思い切り噛み付いた。
口の中に甘くてさっぱりとした汁が広がってゆく。
「生き返る…」
「だろ?感謝しろよな!!」
「最高だぞ勇気!!愛してる!!」
「それはお前…気持ち悪いわ…」
そんなやりとりをして笑っていると外が暗くなって来たのに気付いた。
「勇気」
博貴が真剣な眼差しで勇気を見詰めた。
「どうした?」
勇気は目を丸くしている。
「今日は遅いからもう寝るとして、明日は俺と洋子で島の裏側へ行こうと思う。何か手掛かりがあるかもしれないからさ」
そう言うと勇気は頷いて、
「分かった。じゃ、何か見付けたらよろしくな」
と言った。
暫くすると空は真っ黒に染まった。
勇気は少し山の方へ行って枯れ草と木の枝を持って来た。
「沙紀、お前ティッシュ持ってただろ?一枚貸せ」
言われた沙紀はジーンズのポケットからティッシュを取り出した。
「これでいいの?」
「おう。博貴、ライター」
そういえばライターもポケットに入ったままだ。
「ほらよ」
「サンキュ」
そう言って勇気は枯れ草の上に枝を上手に重ねた。
更にライターで火をつけたティッシュを落とした。
すると枯れ草にすぐ火がついて、暫くして枝に燃え移った。
その後は大きな枝を足していき、火が消えない様にしていた。
「そろそろ遅くなる。二人は寝た方がいいぜ」
勇気は洋子と沙紀にそう促した。
「じゃ、そうする。洋子、寝よっか!!勇気、ヒロくん、おやすみ」
「ヒロちゃん、勇気くん、おやすみ…」
『おやすみ…』
博貴と勇気の声が重なった。
洋子達はクスクス笑って奥へ入って行った。
「博貴…」
勇気の浮かない表情。
博貴は心配になって顔を覗き込んだ。
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