時の言葉

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いつも仕事から帰れば   僕の頭を   撫で回す温かい手に   微笑む笑顔   優しい声   人間の言葉はわからないけど   いつもいつも   ほめてくれてるのは   よくわかる   どんなにいたずらしても   優しい目をした彼女の   温かい手に   いつも撫でられた   でもでもある日を境に   僕はずっと留守番   寂しい夜も   窓から望む三日月も   いつもと違いすぎて眠れない   久しぶりの足音   玄関マットにひた走る僕   開いたドアの向こうには   白髪の大きな大家さん   あの人とは違う   大きな手に抱かれて   わかったんだ   涙で目が腫れている   肩が揺れている   それ以上にもっとわかったんだ   僕はまた一人になっちゃったって   寒い11月の空っ風は   僕にあまりにも冷たく   夢にも出てくる   彼女との思い出だけが   寒さに苦手な僕を   温める   また温かい手で   撫でてほしいと   コトバにならない鳴き声   思い出に問い掛ける
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