何気ない日常

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「こじゅーろーさん、まだかなぁ…」 布団に潜りながら愛しいあの人を待つ。 今は夜11時、「なるべく早く帰る」と小十郎さんは言ってはいたが、やはり残業で遅くなったのだろう。 今日は小十郎さんが帰ってくるまで寝ないつもりだ。 だって、あの人の顔を見て他愛のない話をして、抱きしめあって寝たいんだもん。 独りそんなこと考えていると、時刻は11時30分になっていた。 「小十郎さん……」 さびしいよ。あんたがいない布団は、こんなにも冷たい… ガチャッ 「!?」 「ただいま」 「こ…小十郎さぁん!」 「うぉ!?」 勢い良く布団から這い出た佐助は小十郎に抱きつく。 待ってましたと言わんばかりに。 「も……遅いよ、ばか」 「…すまん」 小十郎は抱きつく佐助の頭をくしゃくしゃと子供をあやすかのように撫でる。 「そういえば…小十郎さん、ご飯食べた?」 「あぁ…遅くなると思ってな、すませてきた。早く帰るって言ったのにすまん…」 「いいよ…」 かくんと頭が揺れる佐助を見ると、小十郎が帰ってきて安心したのか、眠たそうに目を擦る。 佐助は、この時間まで自分を待っててくれた。 ふ、と小十郎は笑みを溢し、佐助をお姫様だっこをしてベッドに向かう。 「わっ…ちょっ、小十郎さん!」 「暴れるな、眠いんだろ?」 「そ…だけど、もう目ぇ覚めたよ」 体勢が恥ずかしくて小十郎のその逞しい胸に顔を埋める。 そのままの体勢で寝室に行き、佐助を布団の上に下ろす。 「あ、ありがと…」 「おぅ」 離れようとする小十郎の裾を掴んで 「もう少し…だけ、傍に居てくれない…かな?」 「…」 滅多に聞けない佐助の我が儘に少し驚く。 「…ごめ「いいぜ、一緒に居てやる」 でも、それが嬉しい。 佐助は自分から我が儘を言わないから。 「ありがとう」 はにかんだ顔を佐助は小十郎に向ける。 小十郎は布団の上で横になり、佐助を抱き締めて眠りに就いた。 end
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