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コンコンッ
「政宗様」
「入っていいぞ」
「はっ」
部屋の中から了承の声が聞こえて、小十郎は短く返事をして中に入る。
「政宗様宛に文が届いております。送り主は甲斐の真田幸村でございます」
「oh…そうか」
先程の男に貰った文を政宗に説明しながら渡す。
政宗は分かったように受け取り、少し乱暴に破いて開ける。
「………甲斐は同盟を承諾するってよ、小十郎」
「誠でございますか」
「あぁ、でよ―…ちょっと頼み事があるんだけどいいか?」
「なんでしょうか?」
そう言って政宗の前で再度正しく姿勢を正して、出る言葉を待つ。
たぶん、机に向かって仕事するのが疲れたとかちょっとの間だけでいいから休ませさせてくれとかだろう。
しかし、沈黙が途切れた後政宗の口から思ってもみなかった言葉が出てきた。
「甲斐に出向いてくれ、今すぐにだ。」
だっ…は…?
頼み事とは休憩の事かと思っていた。
その前に、駄目ですぞ休憩などと言おうとしたが、言われた事と思っていたことが違ったので少し拍子抜けた。
「今すぐにですか…?」
「あぁ」
「……まさか、何か、企んでいるのでは?」
「んなわけねぇよ、これは本気だからな」
政宗の目をじっと見ると、嘘を付くような目ではなかった。
数十年も竜の右目として働いてんだ。嘘か真かぐらい見極めるのは容易い。
「甲斐に行ってもらう理由は後で言う。まずは準備をしてくれ」
政宗の部屋を出た後、
言われた通りに、今すぐ出発出来るように支度を始めた。
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