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そんなことがあってから早半年。
俺は今日も雪子さんの仕事場で装飾品を造っていた。
「どうだ無色?そろそろできたか?」
ちまちまと指輪の裏側に魔術文字を彫っている俺に雪子さんが声をかける。
「待ってください。これで仕上がります」
一番初めに彫った文字と最後の文字を繋げる。
全ての文字を一本の線のみで書き表わす魔術文字が裏側に細かく彫りこまれた指輪がこれで完成した。
「よし。できました雪子さん!」
後ろでソファーに座ってゆったりと魔導書を読んでいる雪子さんに報告。どれ、見せてみろと手を伸ばすお師匠様に指輪を渡して批評を待つ。
雪子さんはしばらく難しい顔をして指輪を眺めていたが、その内少し上機嫌な感じで口を開いた。
「流石だな。巧く造ったじゃないか無色。正直、こんな短期間でディスペル(解魔)の魔術兵装を造れるほど成長するとは思わなかったよ。まあ、私の弟子なんだからそのぐらい当然なんだが」
「はい。ありがとうございます。これも雪子さんの教えのおかげです」
笑いながら頭を下げる。
言葉の最後に少し嫌味たらしいことを言うのは相変わらずだが、誉められるのは純粋に嬉しい。
「わかってるじゃないか。さて、指輪もできたことだし、もう帰りなさい。もうすっかり夜だ」
雪子さんは古めかしい柱時計を指差してそう言った。
短針は7を、長針は3と4の間を指していた。
「うっわ!ヤバい!熱中しすぎた!!」
急いでコートを羽織り、学生鞄を手に取る。
「それじゃ雪子さん、今日はありがとうございました」
普段出入りしてる扉、つまり雪子さんの店の裏口の扉に手を掛け、挨拶をする。
「ああ、この指輪の改善点はまた明日知らせよう。それじゃあな無色」
「はい!さようなら!また明日!」
扉を勢い良く開けて、外へと飛び出る。
真冬の冷たい空気が頬を撫でた。
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