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じきに時刻は夜中の12時。
夜の静けさは更に深まり、草木も眠りだす時間帯。
就寝の1時間前、自室で毎晩欠かさずにやっている日課を始める。
押し入れの奥に保管してある古めかしい木彫りの箱から青いガラス玉を一つ取り出して、床のうえにあぐらをかく。
両の手でガラス玉を握り、目を閉じて一つ大きく息を吐く。
「―――――っふ!」
両の手に力を籠める。
掌から放出されたオドは表面に魔術文字が彫り込まれたガラス玉に吸収されていく。
手を離す。ガラス玉は俺のオドに反応し、淡い光を発しながら二つの手の間で浮いている。
――無色、お前のオドは少なすぎる。だからこれから毎日、このガラス玉にオドを籠めろ。いいか、毎日だぞ?
こうしてオドを貯蔵しておけば、いざという時に役に立つんだ。
塵も積もれば山となると言うだろう?
まあ、塵が積もったくらいで本物には適うはずもないんだがな――
師匠の言葉を思い出す。
半年前、雪子さんの弟子になってしばらくした後にこのガラス玉はもらった。
それから半年間、毎晩こうしてガラス玉と向き合うのが俺の日課になった。
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