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息が荒くなる。
額から流れる汗が顎にまで達して雫が滴れる。
「―――ふっ―く」
ギリ、と奥歯を噛み締める。
ここで集中力を欠いてはまずい。
集中力をなくし、ガラス玉の制御ができなくなれば後は体内のオドが吸い尽くされ干からびて死ぬだけだ。
雪子さん曰く、オドは生命力とまでは言わないが血液と近いものらしい。
少し失うだけならば特に問題はないが、大量に失えば意識も身体の反応も鈍くなり、全てを失えば最終的には死を迎えることになる。
それ故、魔術師の世界では自身のオドの許容量も才能とされる。
どんなに魔術を扱う才能があろうとオドの許容量が少なければ魔術師、魔法使いとして大成することはできない。
自分がそのいい例だと雪子さんは語った。
雪子さんは魔術や魔法を扱う技量ならば世界でもトップクラスだという。しかし、オドの許容量はそれほど多くはなく、魔術よりも莫大なオドを消費して発動する魔法を扱うには少々力不足らしい。
以前、雪子さんの魔法使いとしての実力は中の上から上の下あたりだと本人から聞いた。
それだけの実力があれば十分なのではないかと思ったが、雪子さんの家計は世界でも有名で長い歴史をもつ名家であり、その程度では落ちこぼれもいいとこだと自嘲するようにあの人は語った。
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