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次の週の木曜。
小隊の休憩所で、くつろいでいると有坂曹長が歩いてきた。幹部候補生の有坂は、襟に桜のバッチが付いているから一目瞭然だ。
「おつかれっす~。」
ついこの間まで、三曹だった人だ。五十嵐と同級生で、いろいろと相談できる唯一人でもある。
「お疲れさまです。」
「お、濱名、いいところに。」
ちょいちょいと手招きされたのをみて外に出た。
「なんですか?」
「悪いお知らせ聞きたい?」
「聞きたくないですけど、聞きます……。」
たくらみがある顔の有坂に少しいやそうな顔をして答える。
「うわぁ、かわいくねぇ。」
「元々です。で、なんです?」
笑うと、耳打ちをしてきた。
「どうも、あいつ転属らしいぞ。」
簡潔に言われたそれを理解するのは簡単だった。あいつとは、つまり五十嵐の事で、転属とはつまりこの中隊からいなくなるってことだ。
「へぇ~。」
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