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ふと思い出して五十嵐に聞いた。
「転属するんですか?」
運転していた五十嵐は一瞬ハッとしてこちらをみた。
「有坂か……」
「はい……。」
「そうだな。転属する。北方の部隊にいくことになる。まだ本決まりじゃないがたぶん確定だ。」
淡々と話すのはいつもと一緒だ。そして北方という言葉に少なからず驚きを隠せなかった。なぜならここは九州、西方だ。北方つまりは北海道。
遠いな……。
その次はどこに行くかすらもわからないのだ。ましてや、五十嵐はいい男だ。女には困らないだろう。
あと二ヶ月もない期間の中でどうやって踏ん切りをつければいいかと画策してしまう。
ああ、私こんなに好きなんだ。
「理子……?」
どうか、せめて忘れないでください。そんなことを思うが言葉には出さない。いや出せないのだ。
「君は、すぐ泣く。なぜ一人で悩むんだ。」
いつものように、涙を五十嵐がすくう。
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