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仕事が終わり家路を急ぐ俺を待っていたのは、灯りの点いていないマンションの部屋だった。
怪訝な気持ちに駆られ、エレベーターの扉が開くのももどかしくドアにに駆け寄る。
鍵を回し、ドアを開けて入った部屋は、がらんとしていて誰の温もりも感じさせてはくれない。
「ゆき、翔太! 」
呼びかけるが、返事はない。
綺麗に片付けられた部屋を見回すと、ダイニングテーブルの上に、封筒が一通ポツンと置き去りにされているのが見えた。
震える手で封を切る。
そこには、見覚えのあるゆきの字で、
「さよなら」
一言だけ書かれていた。
判を押した離婚届けと一緒に。
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