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[後日談]
~白羊宮~
今にも意識を手放しそうなムウを支えて、アルテは何とか寝室まで辿り着く事が出来た。
「お師匠、大丈夫ですか?」
声をかけてみたが、微かに短い返事が返ってくるのみ。とても大丈夫そうには見えない。
案の定倒れ込むように寝台に横になる。
「すぐ冷たい水持ってきますね!」
そう言ってアルテは寝室を後にした。
足早に飲み水を器に注ぎ、ムウの待つ寝室へ急ぐ。
「お師匠、水持って…」
寝室に戻ったアルテは、寝台に横たわるムウに声をかけたが、相手が眠っている事に気付き、起こさないように持ってきた水をそっと寝台の近くに置いた。
静まり返った室内に、微かな寝息だけが響く。
アルテは、ムウの寝顔をじっと見つめ、少し前に自分達に起こった出来事を振り返っていた。
『私は、アルテの事を…愛しています。弟子としてでも、娘のような存在でもなく、1人の女性として…』
『アタシは……アタシは、お師匠が好きですっ!』
「(うわあぁあぁ~!!///)」
思わず奇声を発しそうになる気持ちを必死に抑え、その場にうずくまり真っ赤になっているであろう顔を両手で覆った。
その時…
「ん…」
微かに声を発したムウに驚いて、思わずその場から後ずさる。
バクバクの心臓を押さえながら、加害者の意識の有無を確認する為に、立ち上がりそっと歩み寄る。
ゆっくり顔を覗き込むが……どうやらまだ眠っているようだ。
「(あ、焦ったぁ;)」
ホッと安堵の溜め息をつくと、寝台の隅に顔を埋めるようにその場にへたり込むアルテ。
気持ちを落ち着かせようと暫くそうしていたが、定期的に聞こえてくる息遣いに、アルテも徐々に意識を手放していった。
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